◎百官志一
官は職より生じ、職は事に沿い、名はこれに加わる。後世は名に沿い、その実を究めず。吏部は一の太宰にして、大司徒となり、尚書となり、中書となり、門下となる。兵部は一の司馬にして、大司馬となり、太尉となり、枢密使となる。古の官名に沿い、今の職事を分けてこれに配す。ここにおいて先王の天下を統理するの法は、糸を治めて棼るるが如く、名実淆れり。契丹の旧俗は、事簡にして職専、官制朴実、名を以てこれを乱さず、その興るや勃んなり。太祖神冊六年、班爵を正すを詔す。太宗に至り、中国を兼制し、官を分けて南北とし、国制を以て契丹を治め、漢制を以て漢人を待つ。国制は簡朴、漢制は則ち名に沿うの風固より存す。遼国の官職は、北・南の院に分かれ、北面は宮帳・部族・属国の政を治め、南面は漢人の州県・租賦・軍馬の事を治む。俗に因りて治むるは、その宜を得たり。
初め、太祖は迭剌夷離堇を分かちて北・南の二大王と為し、これを北・南院と謂う。宰相・枢密・宣徽・林牙より下、郎君・護衛に至るまで、皆北・南に分かたる。その実の治むる所は皆北面の事なり。遼の官制を語る者は、弁ぜざるべからず。凡そ遼朝の官、北枢密は兵部を視、南枢密は吏部を視、北・南の二王は戸部を視、夷離畢は刑部を視、宣徽は工部を視、敵烈麻都は礼部を視、北・南府の宰相はこれを総べる。惕隠は宗族を治め、林牙は文告を修め、于越は坐して論議し、以て公卿を象り、朝廷の上に在り。事簡にして職専、これ遼の興る所以なり。
北面上
北面朝官
契丹北枢密院。兵機・武銓・群牧の政を掌り、凡そ契丹の軍馬は皆これに属す。その牙帳が大内帳殿の北に居るを以て、故に北院と名づく。元好問の所謂「北衙は民を理せず」これなり。
北院枢密使
北院枢密使事を知る
枢密院事を知る
北院枢密副使
北院枢密副使事を知る
北院枢密使事を同知す
北枢密院事に簽書す
北院都承旨
北院副承旨
北院林牙
北院貼黄を知る
北院に給事し聖旨頭子の事を知る
北院頭子を掌る
北枢密院敞史
北院郎君
北枢密院通事
北院掾史
北枢密院中丞司
北南枢密院点検中丞司事
中丞司の事を総知する
北院左中丞
北院右中丞
中丞司事を同知す
北院侍御
契丹南枢密院。文官の選任、部族、丁賦の政務を掌り、凡そ契丹の人民は皆これに属す。その牙帳が大内の南に居るにより、故に南院と名づく。元好問の所謂「南衙は兵を主とせず」これなり。
南院枢密使
南院枢密使事を知る
南院枢密事を知る
南院枢密副使
南院枢密副使事を知る
南院枢密使事を同知す
南枢密院事に簽書す
南院都承旨
南院副承旨
南院林牙
南院貼黄を知る
南院に給事し聖旨頭子事を知る
南院頭子を掌る
南枢密院敞史
南院郎君
南枢密院通事
南院掾史
南枢密院中丞司
北南枢密院点検中丞司事
総知中丞司事
南院左中丞
南院右中丞
同知中丞司事
南院侍御
北宰相府。軍国の大政を輔佐して掌理することを掌る。皇族四帳は世々その選に預かる。
北府左宰相
北府右宰相
軍国事を総知す
国事を知る
南宰相府。軍国の大政を輔佐し理することを掌る。国舅五帳は世々その選に預かる。
南府左宰相
南府右宰相
軍国事を総知す
国事を知る
北大王院。部族の軍民の政を分掌す。
北院大王事を知る
北院太師
北院太保
北院司徒
北院司空
北院郎君
北院都統軍司。北院の従軍に関する政令を掌る。
北院統軍使
北院副統軍使
北院統軍都監
北院詳穏司。北院部族の軍馬に関する政令を掌る。
北院詳穏
北院都監
北院将軍
北院小将軍
北院都部署司。北院部族の軍民に関する事務を掌る。
北院都部署
北院副部署
南大王院。部族の軍民の政を分掌する。
南院大王
南院大王事を知る
南院太師
南院太保。天慶八年、南院太保を省く。
南院司徒
南院司空
南院郎君
南院都統軍司。南院の従軍に関する政令を掌る。
南院統軍使
南院副統軍使
南院統軍都監
南院詳穏司。南院部族の軍馬に関する政令を掌る。
南院詳穏
南院都監
南院将軍
南院小将軍
南院都部署司。南院部族の軍民に関する事務を掌る。
南院都部署
南院副部署
北院宣徽使
知北院宣徽事
北院宣徽副使
同知北院宣徽事
南院宣徽使
知南院宣徽事
南院宣徽副使
同知南院宣徽事
大于越府。職掌はなく、百官の上に班し、大なる功徳ある者でなければ授けず、遼国の尊官、南面の三公に比す。太祖は遥輦氏の于越より禅を受けしなり。遼の世を終えるまで、于越にて重名を得たる者三人あり:耶律曷魯、屋質、仁先、これを三于越と謂う。
大于越
大惕隠司。太祖が設置し、皇族の政教を掌る。興宗重熙二十一年、耶律義先が惕隠に拝せられ、族人に戒めて曰く「国家の三父房は最も貴族たり、凡そ天下風化の出づる所、不孝不義は、小さきといえども為すべからず」と。その妻は晋国長公主の女、中表を見る毎に必ず礼服を具す。義先は身を以て率先し、国族これを化す。遼国の官を設くる実、ここに見るべし。太祖国を有ち、首にこの官を設け、その後百官人を択ぶに、必ず先ず宗姓をす。
惕隠司事を知る(ちていいんしじをしる)。
左夷離畢事を知る(さいりひつじをしる)。
右夷離畢事を知る(ういりひつじをしる)。
左林牙
右林牙
敵烈麻都司。礼儀を掌る。
敵烈麻都
朝廷の礼儀を総べて知る
総べて礼儀の事を掌る
文班司。掌る所詳らかならず。
文班太保
文班林牙
文班牙署
文班吏
阿札割只。掌る所詳らかならず。遥輦の故官、後に枢密院に併合す。
阿札割只
北面御帳官
三皇は聖人なり、淳朴の世に当たり、重門柝を撃つも、なお暴客を待つに厳なり。遼の先世は、未だ城郭・溝池・宮室の固き有ることなく、氈車を以て営と為し、硬寨を以て宮と為す。御帳の官は謹まざるを得ざるなり。貴戚より出でて侍衛と為り、著帳は近侍と為り、北南の部族は護衛と為り、武臣は宿衛と為り、親軍は禁衛と為り、百官は番宿して宿直と為る。奉宸は以て供御を司り、三班は以て会朝を粛にし、硬寨は以て晨夜を厳にす。法制は厳密なりと謂うべし。その凡そを考うるに左の如し。
侍衛司。御帳の親衛の事を掌る。
侍衛太師
侍衛太保
侍衛司徒
侍衛司空
侍衛
近侍局
近侍直長
近侍
近侍小底
近侍詳穏司
近侍詳穏
近侍都監
近侍将軍
近侍小将軍
北護衛府。北院の護衛の事を掌る。皇太后宮には左右護衛あり。
北護衛太師
北護衛太保
北護衛司徒
総領左右護衛司
総領左右護衛
左護衛司
左護衛太保
左護衛
右護衛司
右護衛太保
右護衛
南護衛府。南院の護衛の事を掌る。
南護衛太師
南護衛太保
南護衛司徒
総領左右護衛司
総領左右護衛
左護衛司
左護衛太保
左護衛
右護衛司
右護衛太保
右護衛
奉宸司。宸御(天子の御物)を供奉することを掌る。
官名は未詳
奉宸
三班院。左班、右班、寄班のことを掌る。
左班都知
右班都知
寄班都知
三班院祗候
宿衛司。宿衛の事を専ら掌る。
総宿衛事。亦た典宿衛事と曰う。
総知宿衛事
同掌宿衛事
宿衛官
禁衛局
総禁衛事
禁衛長
宿直司。輪直の官員の宿直の事を掌る。皇太后宮に宿直官有り。
宿直詳穏
宿直都監
宿直将軍
宿直小将軍
宿直官
宿直の護衛
硬寨司。禁圍の槍寨・下鋪・傳鈴の事を掌る
硬寨太保
皇太子惕隠司。皇太子の宮帳の事を掌る
皇太子惕隠
北面著帳官
古へ刑人は君側に在らず。叛逆の家属は著帳に没し、禁衛に執事す、寒心すべし。これ遼世に肘掖より変多く起る所以か。
著帳郎君院。遥輦痕徳菫可汗、蒲古只等三族を以て于越室魯を害し、家属を瓦里に没す。応天皇太后、国政を知り、これを析出し、以て著帳郎君・娘子と為し、毎に矜恤を加ふ。世宗悉くこれを免ず。其の後、内族・外戚及び世官の家の罪を犯す者は、皆瓦里に没入す。人戸益衆し、因りて復た故の名にす。皇太后・皇太妃の帳には、皆著帳諸局有り。
著帳郎君節度使
著帳郎君司徒
祗候郎君班詳穏司
祗候郎君班詳穏
祗候郎君直長
祗候郎君閘撒狘
祗候郎君
祗候郎君拽刺
左祗候郎君班詳穏司
左祗候郎君班詳穏
左祗候郎君直長
左祗候郎君閘撒狘
左祗候郎君
左祗候郎君拽剌
右祗候郎君班詳穏司
右祗候郎君班詳穏
右祗候郎君直長
右祗候郎君閘撒狘
右祗候郎君
右祗候郎君拽剌
筆硯局
筆硯祗候郎君
筆硯吏
牌印局
牌印郎君
裀褥局
裀褥郎君
灯燭局
灯燭郎君
床幔局
床幔郎君
殿幄局
殿幄郎君
車輿局
車輿郎君
御盞局
御盞郎君
本班局
本班郎君
皇太后祗應司
領皇太后諸局事
知皇太后宮諸司事
皇太妃祗應司
皇后祗應司
近位祗應司
皇太子祗應司
親王祗應司
著帳戶司。もと諸オルド(斡魯朵)の戸より析出し、及び諸色の人の犯罪により没入せられたる者なり。凡そ御帳、皇太后、皇太妃、皇后、皇太子、近位、親王の祗從、伶官は、皆その役に充てらる。
著帳節度使
著帳殿中
承應小底局
筆硯小底
寝殿小底
仏殿小底
司蔵小底
習馬小底
鷹坊小底
湯薬小底
尚飲小底
盥漱小底
尚膳小底
尚衣小底
裁造小底
北面皇族帳官
粛祖の長子洽昚の族は五院司にあり、叔子葛剌、季子洽礼及び懿祖の仲子帖剌、季子褭古直の族は皆六院司に在り。此の五房を、二院皇族と謂う。玄祖の伯子麻魯は後嗣無く、次子岩木の後を孟父房と曰い、叔子釈魯を仲父房と曰い、季子は徳祖たり、徳祖の元子は是れ太祖天皇帝たり、之を横帳と謂う。次に曰く剌葛、曰く迭剌、曰く寅底石、曰く安端、曰く蘇、皆季父房と曰う。此の一帳三房を、四帳皇族と謂う。二院は北・南二王を以て治め、四帳は大内惕隠を以て治め、皆大惕隠司に統べらる。
大内惕隠司。皇族四帳の政教を掌る。
大内惕隠
大内惕隠事を知る
大内惕隠都監
大横帳常袞司。太祖皇帝の后九帳の皇族の事を掌る。
横帳常袞。また横帳敞穏とも曰う。
横帳太師
横帳太保
横帳司空
横帳郎君
横帳知事
孟父族帳常袞司。蜀国王岩木の房族の事を掌る。
仲父族帳常袞司。隋国王釈魯の房族の事を掌る。
季父族帳常袞司。徳祖皇帝の三房族の事を掌る。
四帳都詳穏司。四帳の軍馬の事を掌る。
都詳穏
都監。
将軍。本名は敞史。
小将軍。
横帳詳穏司。
孟父帳詳穏司。
仲父帳詳穏司。
季父帳詳穏司。
舍利司。皇族の軍政を掌る。
舍利詳穏。
舍利都監。
舍利将軍。
舍利小将軍。
舍利。
梅里。
親王国。官制は未詳。
王府の近侍
王府の祗候
左大相
右大相
左次相
右次相
王子院。王子各帳の事務を掌る。
王子太師
王子太保
王子司徒
王子司空
王子班郎君
駙馬都尉府。公主の帳宅の事務を掌る。
駙馬都尉
北面諸帳官
遼の太祖に帝王の度有ること三つあり:遙輦氏に代わり、九帳を御営の上に尊ぶ、一なり;渤海国を滅ぼし、其の族帳を存し、遙輦に次がしむ、二なり;奚王の衆を併せ、其の帳部を撫で、国族に擬す、三なり。英雄の智有ること三つあり:国舅を任じて皇族に耦せしめ、乙室を崇めて奚王に抗せしめ、二院を列ねて遙輦を制す是れ已にす。北面諸帳官を観れば、以て之を見るべし。遙輦九帳大常衮司。遙輦の洼可汗、阻午可汗、胡剌可汗、蘇可汗、鮮質可汗、昭古可汗、耶瀾可汗、巴剌可汗、痕德堇可汗の九世の宮分の事を掌る。太祖遙輦より位を受け、九帳を以て皇族一帳の上に居らしめ、常衮司を設けて之を奉らしむ、有司は与からず。凡そ遼の十二宮、五京は、皆太祖以来征討して得たる所にして、遙輦より受けたるに非ず。其の先世を待つ厚きこと、加うるに蔑し。遼の俗東に向いて左を尚び、御帳は東に向き、遙輦九帳は南に向き、皇族三父帳は北に向く。東西を経と為し、南北を緯と為す、故に御営を横帳と謂う云う。
大常衮。亦た敞穩と曰う。
遙輦太師
遙輦太保
遙輦太尉
遙輦司徒
遙輦司空
敞史
知事
遙輦帳節度使司
節度使
節度副使
遙輦糺詳穏司
遥輦糺詳穏
遥輦糺都監
遥輦糺将軍
遥輦糺小将軍
遥輦克。官名は未詳。
乙室已国舅大翁帳常袞。一に敞穏と作す。
乙室已国舅小翁帳常袞
抜里国舅大父帳常袞
抜里国舅少父帳常袞
国舅太師
国舅太保
国舅太尉
国舅司徒
国舅司空
知事
国舅乙室已大翁帳詳穏司
国舅詳穏
国舅都監
国舅本族将軍
国舅本族小将軍。興宗重熙五年、枢密院奏す、国舅乙室已小翁帳敞史、大横帳及び国舅二父帳に准ひ、将軍と改む。
国舅乙室已小翁帳詳穏司
国舅抜里大父帳詳穏司
国舅抜里少父帳詳穏司
国舅夷離畢司
国舅夷離畢
国舅左夷離畢
国舅右夷離畢
敞史
国舅帳克
国舅別部。世宗が設置した。
官制は詳らかでない。
国舅別部敞史。聖宗の太平八年に、国舅別部敞史蕭塔葛が見える。
渤海帳司。官制は詳らかでない。
渤海宰相
渤海太保
渤海撻馬
渤海近侍詳穏司
奚王府
乙室王府。ともに部族官に見える。
北面宮官
遼は諸宮の斡魯朶を建て、部族・蕃戸を統べるに北面宮官をもってした。左に具す。
諸行宮都部署院。契丹・漢人の諸行宮の事を総べる。
諸行宮都部署
行宮諸部署司の事を掌る
諸行宮副部署
諸行宮判官
契丹行宮都部署司。行在の諸軍及び諸オルド(斡魯朵)の政令を総べる。
契丹行宮都部署
契丹行宮都部署の事を知る
契丹行宮副部署
契丹行宮判官
行宮諸部署司。行在の諸宮の政令を掌る。
行宮都部署
行宮副部署
行宮部署判官
十二宮の職名総目:
某宮
某宮使
某宮の副使
某宮の太師
某宮の太保
某宮都部署司。本宮の契丹軍民の事務を掌る。
某宮都部署
某宮副部署
某宮判官
某宮提轄司。官制は未詳。
某宮馬群司
侍中
敞史
某石烈。石烈は県なり。
某瓦里。内族、外戚、世官が罪を犯した者は、瓦里に没入される。
抹鵠
某抹里
閘撒狘
某得里、官名は未詳である。
太祖弘義宮
太宗永興宮
世宗積慶宮
応天皇太后長寧宮
穆宗延昌宮
景宗彰愍宮
承天皇太后崇徳宮
聖宗興聖宮
興宗延慶宮
道宗太和宮
天祚永昌宮
孝文皇太弟敦睦宮
文忠王府
以上十二宮一府、都署・提轄・石烈・瓦里・抹里・得里などは、すべて『営衛志』に見える。
押行宮輜重夷離畢司。諸宮の巡幸に扈従する輜重の事を掌る。
夷離畢
敞史