遼史

志第十八: 禮志一

◎禮志一

理は天より設けられ、情は人より生ず。理をもって情を制すれば、礼楽の用行わる。林豺梁獺、これより郊禘生じ、窪尊燔黍、これより燕饗生じ、虆梩瓦棺、これより喪葬生じ、儷皮緇布、これより婚冠生ず。皇造帝秩、三王彌文。一文一質、蓋し忠に本づく。変通して弊を革し、時に宜しくするは、唯聖人のみ能く其の意を通ず。理を執る者は膠瑟聚訟、人情に適せず、情に徇う者は梯稗綿蕝、天理に中らず。秦漢以下、君子取る所なし。遼は本より朝鮮の故壌にして、箕子八條の教、流風遺俗、蓋し存する者有り。其の上世より、情に縁りて制を宜しくし、隠然として尚質の風有り。遙輦胡剌可汗は祭山儀を制し、蘇可汗は瑟瑟儀を制し、阻午可汗は柴冊・再生儀を制す。其の情朴、其の用儉。天を敬い災を恤み、恵を施すは孝に本づき、悃忱より出で、殆ど膠瑟聚訟の表に得る者有らん。太古の上、椎輪五礼、何を以て茲に異ならんや。太宗、晋を克ち、稍々漢礼を用う。今、国史院に金の陳大任『遼礼儀志』有り、皆其の国俗の故なり、又『遼朝雑礼』有り、漢儀多し。別に宣文閣に蔵する所の耶律儼『志』を得、大任に視れば加えて詳なり。其の略を存し、篇に著す。

吉儀

祭山儀: 天神・地祇の位を木葉山に設け、東に向く。中に君樹を立て、前に群樹を植え、朝班に像る。又、二樹を偶植し、以て神門と為す。皇帝・皇后至る、夷離畢、礼儀を具す。牲は赭白馬・玄牛・赤白羊を用い、皆牡なり。仆臣を旗鼓拽剌と曰い、牲を殺し、体を割き、之を君樹に懸く。太巫、酒を以て牲に酹す。礼官を敵烈麻都と曰い、「儀辦」と奏す。皇帝、金文金冠を服し、白綾袍、絳帯、魚を懸け、三山絳垂、犀玉刀錯を飾り、絡縫烏靴。皇后、絳末を禦し、絡縫紅袍、玉佩を懸け、双結帕、絡縫烏靴。皇帝・皇后、鞍馬に禦す。群臣は南に、命婦は北に在り、服従は各部旗幟の色に従う。皇帝・皇后、君樹の前に至り下馬し、南壇に升り禦榻に坐す。群臣命婦、班を分ち、次を以て位に就き入る。班を合し、拝し訖り、位に復す。皇帝皇后、天神・地祇の位に詣り、奠を致す。閣門使、祝を読み訖り、位に復し坐す。北府宰相及び惕隱、次を以て君樹に奠を致し、群樹に遍く及ぶ。楽作る。群臣・命婦退く。皇帝、孟父・仲父・季父の族を率い、神門樹を三匝す。余族は七匝す。皇帝・皇后再拝し、在位者皆再拝す。香を上し、再拝すること初めの如し。皇帝・皇后壇に升り、龍文方茵に禦し坐す。再び警を声し、祭東の所に詣る。群臣・命婦従い、班列初めの如し。巫は白衣を衣い、惕隱、素巾を以て拝して之に冠し、巫三たび辞を致す。毎に辞を致すに、皇帝・皇后一拝し、在位者皆一拝す。皇帝・皇后各々酒二爵、肉二器を挙げ、再び奠す。大臣・命婦は右に酒を持ち、左に肉を持ち各々一器、少しく後れ立ち、一たび奠す。命じて惕隱に東に向かって之を擲たしむ。皇帝・皇后六拝し、在位者皆六拝す。皇帝・皇后位に復し、坐す。命じて中丞に茶果・餅餌各二器を奉じ、天神・地祇の位に奠せしむ。執事郎君二十人、福酒・胙肉を持ち、皇帝・皇后の前に詣る。太巫、奠酹し訖り、皇帝・皇后再拝し、在位者皆再拝す。皇帝・皇后一拝し、福を飲み、胙を受け、位に復し、坐す。在位者、次を以て飲む。皇帝・皇后、群臣を率いて復た班位に就き、再拝す。蹕を声し、一拝す。退く。

太宗、幽州大悲閣に幸し、白衣観音像を遷し、廟を木葉山に建て、家神として尊ぶ。拜山儀に於て樹を過ぎたる後、菩薩堂に詣る儀一節を増し、然る後に神を拝す。胡剌可汗の故に非ざるなり。興宗、先ず菩薩堂及び木葉山遼河神に事有り、然る後に拜山儀を行い、冠服・節文多く変更する所有り、後因りて以て常と為す。神主は樹木、牲を懸げて告辦し、班位奠祝し、嘏を致し福を飲む、往々として礼に暗合す。天理人情、諸を四海に放てば準と為し、信なるかな。興宗の更制、経術を以て正す能わず、以て昔に大いに過ぐる無く、故に載せず。

瑟瑟儀: 若し旱あれば、吉日を択び瑟瑟儀を行い以て雨を祈る。前期に、百柱天棚を置く。期に及び、皇帝、先帝御容に奠を致し、乃ち柳を射る。皇帝再び射り、親王・宰執、次を以て各々一たび射る。柳に中たる者は柳に誌す者の冠服を質し、中たらざる者は冠服を以て之を質す。勝たざる者は勝者に進みて飲み、然る後に各々其の冠服に帰す。又、翼日に、柳を天棚の東南に植え、巫、酒醴・黍稗を以て植柳に薦め、之を祝す。皇帝・皇后、東方を祭り畢り、子弟柳を射る。皇族・国舅・群臣礼に与る者、賜物差有り。既に三日雨あれば、則ち敵烈麻都に馬四匹・衣四襲を賜う。然らずば則ち水を以て之に沃す。

道宗清寧元年、皇帝、柳を射り訖り、風師壇に詣り、再拝す。

柴冊儀: 吉日を択ぶ。前期に、柴冊殿及び壇を置く。壇の制、薪を厚く積み、木を以て三級と為し、壇其の上に置く。百尺氈を席とし、龍文方茵。又、再生母後搜索の室を置く。皇帝、再生室に入り、再生儀を行い畢り、八部の叟前導後扈し、左右より扶翼して皇帝を冊殿の東北隅に至らしむ。日を拝し畢り、馬に乗り、外戚の老者を選びて禦せしむ。皇帝疾駆し、仆禦者・従者、氈を以て之を覆う。皇帝、高阜の地に詣る。大臣・諸部帥、儀仗を列ね、遥かに望みて以て拝す。皇帝、使を遣わし勅して曰く、「先帝升遐し、伯叔父兄在り、当に賢者を選ぶべし。沖人徳無く、何を以て謀と為さんや」と。群臣対えて曰く、「臣等、先帝の厚恩、陛下の明徳を以て、咸く心を尽くさんことを願い、敢えて他図有らんや」と。皇帝令して曰く、「必ず汝等の願う所に従わん。我将に賞罰を信明にせん。爾功有らば、陟して之を任し、爾罪有らば、黜して之を棄てん。若し朕が命を聴かば、則ち当に之を謨らん」と。僉に曰く、「唯だ帝命の従う是れ従う」と。皇帝、識る所の地に於て、土石を封じて以て之を誌す。遂に行く。先帝御容を拝し、群臣を宴饗す。翼日、皇帝、冊殿を出で、護衛太保扶翼して壇に升らしむ。七廟の神主を奉じて龍文方茵に置く。北・南府宰相、群臣を率いて圜立し、各々氈の辺を挙げ、祝を賛し訖り、樞密使、玉宝・玉冊を奉じて入る。有司、冊を読み訖り、樞密使、尊号を称して以て進み、群臣三たび万歳を称し、皆拝す。宰相・北南院大王・諸部帥、赭・白羊各一群を進む。皇帝衣を更え、諸帝の御容を拝す。遂に群臣を宴し、賜賚各々差有り。

拜日儀: 皇帝、露臺に升り、褥を設け、日に向かって再拝し、香を上ぐ。門使通じ、閣使或いは副、拝すべき臣僚は殿左右の階に陪位し、再拝す。皇帝升り坐す。榜を奏し訖り、北班起居畢り、時相已下名を通じ再拝し、班を出でず、「聖躬万福」と奏し、又再拝し、各々祗候す。宣徽已下横班同じ。諸司・閣門・北面先ず事を奏す。余同じ。教坊は臣僚と同じ。

告廟の儀:当日、臣僚は未明に朝服を着し、太祖廟に詣でる。次いで臣僚を引き入れ、班を合わせ、まず御容を拝し、再拝を終えると、班首を左上に引き、褥位に至り、再拝する。上香を唱え、欄内に揖して上香を終え、再び褥位に戻り、再拝する。各々祗候して立ち定まる。左右が告廟の祝版を掲げ、御容の前に跪いて捧げる。中書舍人が俯跪し、読み終えると、俯興し、退く。班首を左下に引き、復位し、また再拝する。分かれて上殿に引き入れ、順次酒を三度進める。分班して引き出される。

謁廟の儀:当日未明、南北の臣僚は各々朝服を整え、廟に赴く。車駕が至ると、臣僚は門外で位序に依って立ち並び、駕を望んで鞠躬する。班首は班を出ず、『聖躬萬福』と奏する。舍人が各々祗候を唱え終えると、皇帝は車を降り、分かれて南北の臣僚を左右から引き入れ、丹墀の褥位に至る。班を合わせ定まり、皇帝は露臺の褥位に昇る。宣徽が皇帝の再拝を唱え、殿上下の臣僚陪位は皆再拝する。上香を終え、退き、復位し、再拝する。分かれて臣僚を左右から上殿の位に引き入れ立たせ、御容に酒を進めるのは常礼に依る。もし即座に退くならば、再拝する。舍人が『好去』と唱え、引き退かせる。礼畢。

告廟・謁廟は、皆『容を拝す』と言う。先帝・先后の生辰及び忌辰に行礼するのは、太宗より始まる。その後、正旦・皇帝生辰・諸節辰には皆これを行う。忌辰及び車駕の行幸の際にも、嘗て使者を遣わして行礼した。瑟瑟・柴冊・再生・納後には則ち親しくこれを行う。柴冊・親征には則ち告げ、諸京に幸するには則ち謁する。四時に薦新有り。

孟冬朔の陵を拝する儀:有司が山陵に酒饌を設ける。皇帝・皇后の駕が至ると、敵烈麻都が『儀辦』と奏する。閣門使が皇帝・皇后の位に詣でることを唱え、四拝を終えると、巫が祝して胙を燔き、時服を燔き、酒を酹し、牲を薦めることを唱える。大臣・命婦が順次胙を燔き、四拝する。皇帝・皇后は群臣・命婦を率い、諸陵を循って各々三匝する。還宮。翌日、群臣入りて謝す。

爇節の儀:皇帝即位の際、凡そ叛国を征伐して人民を俘掠し、或いは臣下が人口を進献し、或いは犯罪に坐して官戸に没した者を、皇帝親しく閑田を覧て、州県を建ててこれに居らしめ、官を設けてその事を治める。及び帝崩ずると、置かれた人戸・府庫・錢粟は、穹廬の中に小氈殿を置き、帝及び后妃は皆金像を鑄してこれに納む。節辰・忌日・朔望には、皆穹廬の前に致祭する。又、土を築いて臺と為し、高さ丈余、その上に大盤を置き、祭酒食をその中に撒き、これを焚く。国俗、これを爇節と謂う。

歳除の儀:初夕、敕使及び夷離畢が執事郎君を率いて殿前に至り、塩及び羊膏を炉中に置いてこれを燎く。巫及び大巫が順次火神を祝し終えると、閣門使が皇帝の火に向かって再拝することを唱える。

初め、皇帝は皆親しく拝したが、道宗に至り、始めて夷離畢にこれを拝せしむ。